万年筆を使っていると、必ずお手入れについて考える必要があります。
でも万年筆を使い始めたばかりだと、お手入れって何をしたらいいのかわからないなんて悩みも。
なのでこの記事では「万年筆のお手入れ方法」について、あなたにもわかりやすいように、写真付きで丁寧に解説しています。
この記事でわかること
- お手入れには水洗いが大切
- 各仕組みごとの洗浄方法
- お手入れすべきタイミング
- お手入れにあると便利な道具
コツや手順・タイミングなどが分かれば、意外と手軽なことに気づきます。
では早速、万年筆のお手入れについて説明していきます。

こんにちは、カクタケイです。
1:万年筆大好き29歳
2:10年近く万年筆を愛用
3:30本以上の万年筆をローテーションして使う
万年筆のお手入れには水洗いが大切

万年筆のお手入れには、水洗いが大切です。
人間の血液がドロドロになると詰まって大変なことになるのと同じで、万年筆のインクもドロドロになると詰まって大変なことになります。
万年筆の内部でドロドロになってしまうと、インクが出てこなくなったり、ピストンが動かなくなったりと、トラブルの原因になります。
特に首軸内部は繊細で複雑な構造になっており、インクが詰まりやすいです。
なので、詰まらせてトラブルを起こさないために、水洗いをしてあげるのが大切なんです。
でも本当に大切なのは、毎日使ってあげること。
とはいえ、万年筆を使うのに一番のお手入れは、毎日使うことです。
文字を書くことでインクが少しずつ流れるので、内部でインクが固まる可能性が減るからです。
毎日使うことで万年筆の不調にも気づけるので、名前だけでも良いので書いてあげるのがオススメです。

特にペン先はキャップ内とはいえ、インクが空気に直接触れているので、しばらく放っておくと煮詰まって濃くなりやすいです。
そのまま長期間使わずにおいてしまうと詰まってしまうので、毎日使うのが一番のお手入れなんです。

万年筆を使い始めたときは半信半疑でしたが、7年も使っていると納得しました。
でも実際、万年筆を毎日つかうのは大変ですよね。
そんなあなたにオススメなのが、プラチナ万年筆 #3776センチュリー。
最長2年間放置してもインクが乾かずに描き始められるので、安心して万年筆を使えますよ。
具体的なお手入れの手順
では、具体的なお手入れの手順を、写真を織り交ぜながらわかりやすく解説します。
用意するもの一覧
- 水を注いだコップ
- インク汚れがうつる可能性があるので、汚れても良いものがいい
- 柔らかい布やキッチンペーパー
- 繊維が出やすいので、ティッシュはNG
- ゆとりのある時間
- 焦って作業すると、ペン先を傷つける恐れがあるから

カートリッジ・コンバーター・吸入式それぞれ解説しているので、
「用意するもの一覧」の下のボタンをタップして、好きな項目にジャンプしてください。
カートリッジ式のお手入れ方法
- 手順1カートリッジを首軸から抜く
注釈:撮影のため、新品のカートリッジを使っています。 注意点- インクが飛び散る可能性があるので、じわじわ丁寧に抜く。
- 抜いた時に、ペン先がどこかに当たらないように力を加減する。
- 手順2水の入ったコップに、首軸ごと水に浸けておく(最長1日くらい)注意点
- ペン先がコップの底に勢いよくぶつからないように、丁寧に置く。
- 手順3首軸側から流水で流し、内部に残った水を流す注意点
- 流水をかけた時、手から首軸を落としてしまわないように気を付ける。
- 手順4柔らかい布やキッチンペーパーで水分を吸い取る
- 布にインクの色がつかなくなれば終了
コンバーター式のお手入れ方法
コンバーター式万年筆を洗う際は、コンバーターを水に浸けないように注意しながらお手入れしましょう。

コンバーターを水に浸けてしまうと、隙間からコンバーターの内側に水が入り、
壊れる原因になってしまいます。
- 手順1コンバーターを装着したまま、ペン先を水に浸ける
- 手順2コンバーターを利用して、10回ほど吸入・排出を繰り返す注意点
- コンバーターを動かす時に、ペン先がコップの底に当たらないように気を付ける。
- 手順3コップの水を入れ替えて、さらに5回ほど吸入・排出を繰り返す
- 手順4コンバーターを外し、首軸側から流水で流し、内部に残った水を流す注意点
- 流水をかけた時、手から首軸を落としてしまわないように気を付ける。
- 手順5柔らかい布やキッチンペーパーで水分を吸い取る
- 布にインクの色がつかなくなれば終了
吸入式万年筆のお手入れ方法
吸入式もコンバーター式と同じように、吸入機構を水に浸けないように注意しながらお手入れしましょう。

コンバーター同様、吸入機構を水につけてしまうと、
隙間から吸入機構の裏側に水が入り、壊れる原因になってしまいます。
- 手順1ペン先を水に浸ける
- 手順2吸入機構を利用して、10回ほど吸入・排出を繰り返す注意点
- 吸入機構を動かす時に、ペン先がコップの底に当たらないように気を付ける。
- 手順3コップの水を入れ替えて、さらに5回ほど吸入・排出を繰り返す
- 手順4柔らかい布やキッチンペーパーで水分を吸い取る
- 布にインクの色がつかなくなれば終了
お手入れすべきタイミングは3通り
万年筆をお手入れするべきタイミングは以下の3通り。
- インクを替える時
- インクが出にくくなった時
- 万年筆を長期間使わない時
このポイントを守って万年筆を使えば、大切な万年筆をより長く、良い状態で使えます。
それではわかりやすく理由を解説していきます。
インクを替える時
万年筆のインクが混ざると、インクが変質して万年筆に悪影響を与える恐れがあります。
なのでインクを替える時には、丁寧に水洗いする必要があります。


インクは一見して色が違うだけに見えますが、中の成分が微妙に異なっているんですよ。
・インキは化学製品です。たとえ同色でも他社のインキとは配合が異なります。混ぜると化学変化を起こしますので絶対に混ぜないでください。
パイロット インクカートリッジ注意書きより
・インキの色を変える場合はゆるま湯でペン先、首部をよく洗ってください。
・インク色を変更する場合は、化学変化が生じますのでペンカバー内部を水洗いしてください。
プラチナ万年筆 インクカートリッジ注意書きより
・他のインクと混合しないでください。


同じインクでも、製造時期によっては成分が異なることも。
大丈夫かなと迷ったら、とりあえず水洗いすると安心ですね。
意図的にインクを混ぜることはほとんどありませんが、やってしまいがちなのが、洗浄不足により万年筆内部でインクが混ざること。
万年筆はその構造上、内部にインクが残りやすいので、注意が必要です。


このように、構造上どうしてもインクが内部に残ってしまう万年筆もあります。
なので、できる限り入念に洗ってあげるのが大事なんですよ。
インクが出にくくなってきた時
インクが出にくくなってきた時は、中でインクが詰まりはじめているか、インクが濃くなって流れにくくなり始めている時です。
そんなときは一度水洗いをして、万年筆内部をリセットしてあげる必要があります。
こんな細い溝の間をインクが流れるので、ドロッとしたインクだとすぐに詰まってしまいますよね。


濃くなると粘度が高くなり、設計した通りのインクフローではなくなります。
なのでインクが出にくいと感じたときは、手間ですが水洗いしてあげるのがオススメです。
万年筆を長期間使わない時

万年筆を長期間使わないときは、インクが内部で固まってしまうのを防ぐために、水洗いでキレイにしてから保管しましょう。
内部でインクが固まってしまうと、メーカーでの分解修理しか対応できないことも多々あります。
逆に、しっかりと水洗いをしてキレイにしてさえおけば、長期間保管しておいてもトラブルが発生することはほぼないので、安心して保管できますよ。

万年筆はコアなファンがいるので、しっかりした物なら売却もできます。
ですが故障していたら売却できなくなるので、後を考えて丁寧に保管しておくと良いですよ。
丁寧にお手入れしたいあなたには、洗浄キットや超音波洗浄機があると便利です
万年筆をより丁寧に洗いたいあなたには、万年筆用の洗浄キットや、超音波洗浄機がオススメです。
ボク自身もどちらも愛用しているので、オススメの理由を解説します。
万年筆洗浄キットのオススメは「プラチナ万年筆 万年筆専用インククリーナーキット」

万年筆洗浄キットはパイロット・プラチナ万年筆・セーラー万年筆の3社から発売されていますが、オススメはプラチナ万年筆の万年筆専用インククリーナーキット。
なぜなら付属の洗浄液が強力で、内部でインクが多少固まってしまっても溶かして落とせるから。
洗浄液をコップの水で希釈してつけ置きや吸入・排出を繰り返すと、水だけでは出なかった汚れがジワッと出てくることが多々あります。
ちょっと放置してしまってインクが固まってしまったり、古典ブルーブラックや顔料インクなどの落としにくいインクを使っている人は、この洗浄液を使うと解決できることが多いです。

付属のスポイトはプラチナ万年筆用ですが、洗浄液はどんな万年筆にでも使えます。
後述の超音波洗浄機と合わせると、落とせない汚れはほぼなくなります。

超音波洗浄機のオススメは「シチズン SWT710」

より強力に汚れを落としたい人にオススメなのが、超音波洗浄機です。
超音波洗浄機を使用して万年筆を洗うと、水洗いでは取りきれなかった奥深くのインクも出てきます。
振動子による超音波の振動で、水中に目に見えない気泡(キャビテーション)が無数に発生します。
その気泡(キャビテーション)のはじける瞬間にでる衝撃波が手のとどかない微細なすき間の汚れを粉砕して、布やブラシ、水流では落ちない汚れをスッキリ取り除きます。
シチズン・システムズ株式会社 SWT710より
ボクが使っているのは、シチズンのSWT710。
振動子が2つあるので強力に洗浄でき、洗浄曹の幅も広いので、万年筆だけでなくメガネや時計のバンドなども洗えます。


知人が歯列矯正器具を洗うのに使ったりもしてました。
手洗いでは取りきれない汚れを落とすのにちょうどいいんです。
超音波洗浄機は洗浄するものに負荷をかけるので、粗悪品は避けたいところ。
その点シチズンの製品なら安心して利用できますし、実際に2017年に購入してずっと使っていますが、今のところトラブルなく安心して使えています。

保管前やインクの種類を変える前だけ、スポット的に使うようにしています。
シチズンらしく、精密機器を洗うのに適した作りなので、万年筆にも安心して使えます。

まとめ:万年筆のお手入れは水洗いが基本。たまに洗浄液などを。

今回は、万年筆のお手入れ方法についてでした。
万年筆はインクが固まってしまうとトラブルの原因になります。逆に、インクさえ固まらなければ、意外とトラブルとは無縁だったりします。
水やタオルを用意して…と少々手がかかるのがネックですが、丁寧にお手入れをしてあげれば、大切な万年筆を長い間快適に使えます。
お手入れのタイミング
- インクを替える時
- インクが出にくい時
- あまり使わなくなった時
ぜひお手持ちの万年筆を愛用するために、丁寧にお手入れしてあげてください。

コツさえ掴んでしまえば、かなり気楽にお手入れできるようになります。
好きな万年筆を良い状態で使えるように、丁寧にお手入れしてあげてくださいね。