昨今、じわじわと万年筆の人気が出てきており、万年筆に興味がある人が増えてきました。
しかしブランド・ペン先・素材など、千差万別すぎて難しいのが万年筆の弱点だったりします。
特に万年筆を使い始めた時にはさっぱりわからず、見た目くらいでしか選べなかったりしますよね。
万年筆好きをこじらせた結果、どんなものがあるのか知りたくなり、万年筆を100本以上買って使うことになりましたが、そのおかげで今は「好きな万年筆の傾向」を理解できました。

今回は昔のボクと同様に、好きな万年筆がわからないあなたに向けて、ボクが現在所有している30本ほどの中から、特に気に入っている10本を紹介します。
また、ボクは下記の基準で万年筆を選んでいるので、参考になれば幸いです。
- 細字〜中字の万年筆が好き
- ステンレスより金のペン先が好き
- デザインが華やかな万年筆が好き
→細めのペン先で万年筆らしい書き味が好み。華やかなデザインだとなお良し。
日本製や海外製、金額の差などは考慮せずに紹介していくので、「こんな万年筆もあるんだなぁ」って気楽に読んでもらえると嬉しいです。

本当に良いと感じるモノを、良いところをピックアップして紹介します。
けいたろー通信No.1万年筆:中屋万年筆 背鰭 ver.2

中屋万年筆 背鰭 ver.2の良い点
- 厚塗りされた漆の美しさ
- 手作業だから作れる唯一無二のデザイン
- 一人ひとりに合うように調整されたペン先
中屋万年筆 背鰭 ver.2。This is メイドインジャパン。
なによりデザインが特徴的な万年筆で、軸からペン先まで、職人の手によるハンドメイドで作られています。

背鰭(せびれ)と言うように、万年筆にヒレが生えたようなデザインをしています。
日本刀をイメージして作られており、凛とした空気感を感じます。

漆塗りの軸は透き通るようで、手に吸い付くような感触をもっています。
なので、とても太い軸ですが安定感があり、いかにも万年筆といった書きごこちを楽しめます。

ペン先は細字を選びましたが、中屋万年筆では超極細から極太・ミュージック、さらには軟ペン加工もお願いできます。
日本の万年筆なので字幅が細く、実用しやすいのもGood。ここは海外製と大きく異なるところですね。
軸の漆やクリップの色など、様々な仕様を選んで自分好みの一本を作れるので、お気に入りの一本を作って愛用できますよ。

そして、漆は時間の経過で明るく透き通るように変化していきます。
使うことで漆の変化やペン先の成長をたのしめるなんて、粋な万年筆ですよね。

購入して日は浅いですが、デザインも実用性も大満足。
いつまでも新鮮な気持ちでいられる、素敵な万年筆です。
パイロット グランセ

パイロット グランセの良い点
- 細軸+嵌合でサッとどこでも使いやすい
- 書き味ふわふわで筆欲を満たせる
- さりげなく華やかなデザイン
パイロットが作る細軸万年筆、グランセ。
価格は1万円程度なので、万年筆にしてはお手頃なので売れている、と思いきや。
パイロットにはカスタム74という同価格帯のエントリー万年筆があるので、なかなか注目されない存在です。
ですがグランセは、実用したい人にも万年筆を楽しみたい人にも、魅力たっぷりなんです。

まず、嵌合キャップを採用していること。
1万円を超えてくる万年筆は軒並みネジ式キャップが多くなり、嵌合式はあまりありません。
(海外製万年筆では、3万円前後まで嵌合式がある)
嵌合キャップは使いたい時にサッと使える実用性の高さが魅力です。

さりげなく胸ポケットや手帳に忍ばせておきながら、サッと使えるのが嬉しいんです。

次に、14金のペン先が柔らかく仕上げられていること。
グランセのペン先は柔らかくコシがあり、万年筆らしい書き味を堪能できます。
小ぶりなペン先なのですが、初めて書いた時には表現能力の豊かさに驚きを感じました。

試筆して即決したのは良い思い出です。

最後に、デザインが華やかなこと。
ボクが所有するグランセNC ダイヤモンドシルバー(廃盤)は比較的シンプルですが、現在のグランセはパールカラーに金メッキで、さりげなく華やかなデザインをしています。

女性向けのパールピンクやパールホワイトに加え、
男性でも持ちやすいダークブルーやブラックもラインナップされています。
あまり有名な万年筆ではありませんが、完成度が高く、ずっと残り続けてほしいなぁと思う万年筆です。

プラチナ万年筆 #3776センチュリー

プラチナ万年筆 #3776センチュリーの良い点
- 1万円台とは思えない14金ペン先の大きさ
- 2年間放置しても乾かずに使える安心感
- 字幅とデザインが豊富で選ぶのが楽しい
ボクのブログでは何度か紹介している、プラチナ万年筆 #3776センチュリー。
1万円台の万年筆の中では大きいペン先をもっており、コストパフォーマンスに優れているのが何よりのお気に入りポイントです。
もちろん「ペン先の大きさ=優秀」ではありませんが、#3776のペン先は大きさを有効活用したしなりをもち、懐の広い書き味を持っています。

かなり気に入っているので、なにかと比較対象に引っ張り出してきたりします。

ボクがこの万年筆を好きな理由に「プラチナ万年筆のブルーブラックを安心して使える」ってのがあります。
プラチナのブルーブラックは「古典ブルーブラック」と呼ばれるインクで、とにかく乾かれると万年筆に悪影響が出ます。
しかし#3776センチュリーは、スリップシール機構で2年間放置してもインクが乾き切らないので、プラチナ万年筆のブルーブラックを安心して使える絶大な信頼を寄せています。

#3776センチュリーは、カラーリングや字幅、限定品が豊富なので、自分の好みの一本がみつかります。
ボクも通常のブルゴーニュと限定品の山中・薫風の3本を所有しており、字幅も3本とも分けてあります。

特にプラチナ万年筆しか作れないUEF(超極細)が好みで、針のような書き味と細さから、超実用の万年筆として酷使しています。

パイロット エラボー

パイロット エラボーの良い点
- 使うだけで文字がちょっとうまく見える
パイロット エラボー。使うだけで字がちょっとうまく見える万年筆です。
それが唯一の特徴です。

本当にそれだけなんだけど、それが最大の特徴なんです。

理由はエラボーのペン先にあり、拡大してみるとクチバシのような独特な形状をしています。
このペン先は、縦にしなる独特な書き味を持ち、そのペン先のおかげでハネ・ハライの表現がしやすく調整されています。

普通のペン先は斜めにしなって開くんですが、エラボーは縦にしなるんです。

ボクが持ってるのはSF(軟細字)ですが、これは実用前提で細めの字幅が好きだから。
試筆した感覚ならSMの方がタッチが柔らかく、カリカリ感がなかったので、実用より書き味を楽しみたいなら、SM(軟中字)かSB(軟太字)がオススメです

ペン先が柔らかいので、他の字幅より少し文字が太くなりやすいです。
SMだと普通のBくらいの太さになるので、気をつけてください。

ペリカン スーベレーン M400

ペリカン スーベレーン M400の良い点
- 美しくも遊び心のあるデザイン
- コンパクトながらも実用的な吸入式
- どんな時にも使えるカッチリとした書き味
ペリカン スーベレーン M400。コンパクトでオシャレな実用万年筆です。
カラフルな縞の軸や、ペリカンの顔を模したクリップ、バイカラー仕上げのペン先など、細部まで丁寧にデザインしてあります。

手帳に添えたり、胸ポケットに添えるとオシャレ。色や仕上げには高級感があり、男性でも女性でも使えるユニセックスなデザインです。
デザインだけじゃなく、もちろん実用性も抜群。
細身でコンパクトながら、インクタンクの容量がより大きいM800とほとんど同じ、ペン先もカッチリしているので、強い筆圧を受け止める余裕があります。

華奢にも見えますが、サイズを生かして持ち運び、ガンガン使えます。

軸の縞は緑だけでなく赤や青、金、黒など、さまざまな種類があります。
#3776と同じくらい気に入っているので、緑縞のEF(極細字)・茶縞のF(細字)・金縞のF(M450という亜種)の3本を保有しています。
実用的なサイズで持ち運ぶことが多いですが、ペン先は海外製ゆえに少し太めです。
日本製でFが欲しいならEFを、Mが欲しいならFを選んでおいた方が実用しやすいです。

パイロット カスタム845

ペリカンM400の良い点
- 柔らかく懐のある書き味
- とにかくツヤツヤの漆の美しさ
- 大容量コンバーターが使える実用性の高さ
パイロット カスタム845。5年ほど前までは、パイロットのフラッグシップだった万年筆です。
軸には漆が丁寧に塗られており、樹脂製万年筆とは異なる艶やかな美しさが魅力。
ペン先には適度なしなりがあり、エラボーほどではないですがハネ・ハライの表現がしやすいんです。

余談ですが、過去にカスタム823やカスタム742なども使っていて感じたのは、パイロットの万年筆は、総じて日本語の表現力が高いってことです。

どれを使っても絶妙な表現ができたんです。
特にカスタム742のFA(フォルカン)は、毛筆のようなタッチの字が書けました。

ボクが持っているのは細字ですが、インクフローが潤沢でカリカリ感はごくわずか。
太字はもちろん滑らかで気持ち良いのですが、あえて細字で使ってもらいたい一本です。
どんな字でも受け止めてもらえる安心感があり、普段使いにもガンガン使えるので、万年筆を使うのが楽しくなりますよ。

ペリカン スーベレーン M800

ペリカンM800の良い点
- どっしりとしたバランス感
- 華々しく主張があるデザイン
- 適度なバネ感のある優しい書き味
ペリカン M800。先に紹介したM400が大きくなりました。

全体デザインはほとんど変わりませんが、大きくなったことで華々しさが増した印象です。
M400とは異なり、吸入ピストンが金属製になるので重心は後軸よりに変化しており、手にどっしりとのしかかるバランス感があります。

M400は軽くて振り回せる感じ。
M800は重くてゆったりした感じ。

ペン先は18金で大きく、金の柔らかさを生かしたバネ感のある書き味が魅力です。
実用にも趣味の万年筆にも使える万年筆で、趣味の文具箱という雑誌のPen of the Yearに何度も選ばれるほど、愛される万年筆なんです。

ボクは緑縞(F)と黒縞(F)の2本を持っており、どちらもインクフローを潤沢に、遊び用の万年筆に調整してあります。
緑縞は華やか、黒縞は質実剛健感があってどちらも魅力的な存在です。


パーカー デュオフォールド

パーカー デュオフォールドの良い点
- ガチガチだが驚くほど軽やかな書き味
- コンバーター式なのに後ろバランスで安定
- 軸の太さやカラーリングが豊富
パーカー デュオフォールド。ダグラス・マッカーサーも使った、歴史ある万年筆です。
1990年から英国王室御用達(ロイヤルワラント)を獲得し続けており、品質の高さは証明済みです。
コンバーター式ですが後部が重くなるように設計されており、重量バランスの違和感を感じずに使えます。

ペン先はクルミのチップを用いて56時間かけて研磨されています。
おかげで、ガチガチのペン先・良好なインクフロー・重量バランスの良さが合わさり、引っ掛かりのないアイススケートのような滑らかな筆記感があります。

前述のM800を、調整師の方に調整してもらう際に、
「デュオフォールドのような潤沢なインクフローで」とお伝えしたら、
「あれは特別だからねー」と言われたのをいまだに覚えています。

ボクが持っているのはチェックグリーンCTと呼ばれる過去の限定品で、現在はラインナップされていません。
フラッグシップの万年筆ですが、時にこういった遊び心のある限定品が発売されるのがパーカーの良いところですね。
現在はブラック・レッド・ブルーシェブロンの3色のラインナップになっています。
その中でもレッドは「ビッグレッド」と呼ばれており、1921年にデュオフォールドを発売し始めたときの復刻カラーになっています。歴史を感じる色ですね。

ビスコンティ ウォールストリート

ビスコンティ ウォールストリートの良い点
- デザインと書き味を楽しむ趣味の万年筆
- あたりの柔らかいしなやかな書き味
- 芸術性の高い独特なデザイン
ビスコンティ ウォールストリート。マンハッタンの夜景をイメージした万年筆です。

軸はセルロイドで作られており、光の当たる角度によってはキラッと光る、煌びやかなデザインになっています。

ビスコンティの万年筆は、
イタリア製だけあってほかのメーカーよりデザイン重視なところがありますね。

14金のペン先は柔らかくしなりがあり、多少の筆圧でスッと開くので、紙の上を踊るような書き味になっています。
インクフローも潤沢で、紙の上にインクが盛り上がるほどだったり。
細かく文字を書くというよりは、ただただ気分の赴くままに、自由にペンを走らせて楽しむ使い方のほうが向いている印象です。

万年筆に実用性を求めるボクとしてはあまり使用頻度は高くないのですが、このペンで書くのが楽しかったり、デザインに一目惚れしているので、手放せなかった万年筆でもあります。

文房具店で見つけたときにはすでに廃盤でした。
偶然気付いて購入できてよかったと感じてます。

モンブラン マイスターシュテュック ル・グラン

モンブラン マイスターシュテュック ル・グランの良い点
- ガッチリとした硬い書き味
- 149と同じインク容量で安心
- 軸のバランス感も良く、非の打ち所がない
モンブラン マイスターシュテュック ル・グラン。 持ち運びにピッタリの実用万年筆です。
フラッグシップの「マイスターシュテュック 149」を、より細くして持ち運びやすくした万年筆です。

ペン先はガッチリとした硬い書き味で、万年筆らしいしなやかさとは無縁の存在です。

インクの容量も多いので、インク切れの心配もほぼありません。
何よりル・グランはインク窓がわかりやすいので安心。ペン先を上に傾けながら開けると、すぐ残量が目に見える、視認性の良いデザインになっています。

ちなみに、濃色のインクを見えるとインク窓がほぼ見えなくなります。
デザインとして優秀すぎますね。

ここまでの流れだと「特徴なくない?」となるのですが、その特徴のなさがル・グランの何よりのいいところ。
万年筆としてシンプルに使いやすく、それでいてモンブランらしい上品な仕上がりになっているので、いつ何時でも使いやすいんです。
普遍的な万年筆の良さを追求した一本。さすがモンブランといった印象です。

シンプルに使いやすい、モンブランの万年筆に対する回答が垣間見えます。

ル・グランは、プラチナライン1本と限定品を2本保有していますが、実際使うのはプラチナラインのみです。
限定品はモンブランのクラフツマンシップが感じられますが、少しだけ装飾品の側面が強い印象がありますね。

デザインの良さに惹かれて買ったら、あまり実用向きではなく感じました。
使おうと思えば使えますが、ル・グランの普遍的良さはあまりありません。

モンブラン マイスターシュテュック 149

モンブラン マイスターシュテュック 149の良い点
- 万年筆の王様とも称されるクオリティ
- 強めの筆圧にも応えられるペン先
- 年代ごとに異なる書き味が魅力
モンブラン マイスターシュテュック 149。万年筆の王様です。
特にネガティブな要素のないのが魅力。強いて言えば、その大きさでしょうか。

単体だとそこまで大きくなさそうに見えますが、先ほどのル・グランと並べてみると一目瞭然。
149の軸は、よくある4色ボールペン並みの太さがあります。

最初は少しだけ慣れが必要かもしれません。

ペン先はガチガチで、こちらもル・グラン同様に万年筆らしいしなやかさとは無縁です。
この硬さは時代背景を考慮しており、現代人の筆圧が昔の人よりはるかに強いからです。

ボールペンを使うようになって、人の筆圧は一気に強くなりました。
ペン先が柔らかいと壊れてしまうので、硬くしてあるんです。
なので、昔の149はもっとふわっとした書きごこちでした。

なぜ149の変化を知っているかと言うと、ボクは149を好きすぎて現行品3本・昔の3本、合計6本の149を持っているから。
所有する前からいろいろな情報で、時代ごとのペン先の変化は知っていました。
実際に所有して使ってみると、確かに言われている評判通り、149のペン先は時代ごとに変化しているのがわかりました。

どの時代のペン先がいい!っていうことはなく、
その時代ごとの良さがあるのがいいところです。

ただ、ペン先こそ変われど、全体的なデザインやバランスは大きく変わっていません。
どの時代の149をもってみても、149らしさ、普遍的な書きやすさは変化していないと感じます。

現行品には現行品の、昔には昔の良さがあります。
ボクは現行品の149のブレなささが好きです。

ペンそのものが大きすぎたり、「万年筆の王様」という評判から敬遠されがちですが、149を使うと万年筆に対する評価がガラッと変わります。
モンブラン マイスターシュテュック 149は、それほど優秀な万年筆です。

背鰭ver.2を入手する前は、149が最高だと思ってました。
でもまだまだいろいろ試す必要がありそうです。

まとめ:純粋にオススメの万年筆を紹介しました

今回は、オススメの万年筆10選についてでした。
万年筆は1本1本の違いが大きいので、使う人によって好き嫌いがハッキリと分かれる筆記具です。
ボク個人の好みでオススメの万年筆を10本紹介しましたが、必ずしもあなたの手に合うとは限りません。
あくまでこの記事は参考程度にしつつも、気になったら丸善や伊東屋、ナガサワ文具センターなど各地の万年筆取扱店で実際に試してみるのをオススメします。

「この万年筆気になる!」と思ったら、ぜひ実際の店舗での試し書きをオススメします。
この記事が、あなたと万年筆の素敵な出会いの手助けになれば、幸いです。
「万年筆の選び方がわからない!」そんな方には以下の記事で分かりやすく解説しているので、ぜひご覧ください。
万年筆がオススメの理由
万年筆をつかってみたい人に向けて
万年筆のお手入れについて

万年筆は非常に奥深い世界です。
ゆえに自分にピッタリの万年筆を見つけるのは、とても楽しいひと時です。
あなたも、その世界に踏み込んでみませんか。ボクはあなたの旅路を応援しています。