こんにちは、万年筆が大好きなカクタケイ(@kakutakei)です。
先日行われた中屋万年筆の実演販売イベントで、十角TW 鴇溜(ときため)を購入しました。

今まで十角STは所有していましたが、十角TWを所有するのは初めて。
「STとTWなら、シンプルなSTを選ぶかな」と思ってSTばかり選んでいたんですが、実際に使ってみると2つとも少しずつ違う特徴を持つ軸だったんです。
十角の購入を悩む人に向けて、手持ちのSTとTWを見比べながら紹介していきます。
中屋万年筆 十角を使っていて感じた事
- 十角軸と漆のコラボレーションが美しい
- 実はTWはSTより1mm太かった
中屋万年筆 十角とは

十角(じゅっかく/じっかく)は、中屋万年筆が販売する手作り万年筆。
名前の通り、十角形の軸をしているのが特徴です。
STとTWの2種類が用意されており、STはまっすぐ、TWは少しねじってあります。


「中屋万年筆って何?」という方は、以前書いた別の万年筆の紹介で触れているので、ご覧ください。
中屋万年筆 十角 フォトレビュー
それでは実際に、十角のSTとTWのそれぞれを見ていきましょう。
十角ST ライター
ボクが使っている十角STは2本ありますが、どちらも「ライター」と呼ばれるクリップ付きのタイプを選びました。
左が青溜(あおため)、右が黒溜(くろため)です。

青溜は、緑の下地の上に青く透ける漆が塗られています。
角の部分は青のような緑のような不思議な色味になっており、現在は生産されていない色です。


現在は似た色で、緑溜がラインナップされています。
黒溜は、赤い下地の上に真っ黒な漆が塗られています。
黒い漆の部分は光を吸い込むような黒さがありますが、角の部分では鮮やかな赤がチラ見えするのが特徴です。

どちらもキャップを外しました。
青溜にはルテニウムメッキのペン先が、黒溜には塗分けのペン先が装着されています。

塗分けのペン先はプラチナのブルーブラックの影響で焼けてしまっており、本来の色味ではないのでご承知おきください。
もしかしたらルテニウムメッキのほうも変化している可能性がありますが、黒めのメッキなので変化しても目立つことはなさそうです。

よく見てみると、青溜のねじ切りは漆が透けていますが、黒溜のねじ切りは漆がほぼ透けておらず真っ黒です。
また、参考として赤溜や鴇溜も並べてみると、どうやら漆や下地の色で透けやすい透けにくいがありそうな様子。
個人的には、ここが透けていると漆らしさが見えるので、透けている方が好みだったりします。

十角TW シガー
TWはSTと異なり、「シガー」と呼ばれるクリップがないタイプを選びました。
色は鴇溜(ときため)です。

日本の伝統色である鴇色をイメージした優しい色と溜めの落ち着いた色合いが融合し、柔らかさを感じる仕上がりになっています。
中屋万年筆 十角 ・ シガー 鴇溜 (TW) より

鴇色は、トキの風切羽に似た、薄いピンクのような色の事です。
濃い部分は赤茶っぽく、角の部分は鴇色になっており、なんとも奥ゆかしい色味をしています。

こちらもキャップを外しました。
首軸を見てみると、飴色のような、コーヒーのような色味をしていますね。
まだ購入から日が浅く、使用して漆が変化する前の色なので、変化したらより鴇色に近づくのか楽しみです。

ペン先は鴇溜に合わせて色味の一体感を出すために、ピンクゴールドメッキに変更しました。
比較のために、通常のゴールドのペン先を並べてみました。
写真左のピンクゴールドのほうがわずかに赤みがあるのが、かろうじてわかりますね。


軸色からペン先までトータルコーディネートが出来るのが、中屋万年筆の強みですね。
2種類とも並べてみる
STとTWを並べました。
どちらも同じ十角ですが、まっすぐとねじってあるだけの違いで印象がガラリと変わります。

ただの漆の違いなのかもしれませんが、STのほうが角の色が薄い部分が細く、シュッとした印象があります。
写真一番左のTWは、なんとなく表面がぽってりとした印象に仕上がっていますね。


形状の差なのか、漆の差なのかはよくわかりません……。
中屋万年筆 十角を使っていて感じた事
続いて、十角を使っていて感じたことについて紹介します。
- 十角軸と漆のコラボレーションが美しい
- 実はTWはSTより1mm太い
十角軸と漆のコラボレーションが美しい
十角はあまり類を見ない、角型デザインの万年筆です。
他のメーカーからも角型の万年筆は発売されていますが、大きく異なるのはその仕上がり。
中屋では漆を用いているので、角の部分で漆の濃淡が変化し、良い味になっているんです。

丸軸では、ねじ切りや天冠付近などで下地や変化が見えるだけですが、十角は至る所で漆の変化が見えますよ。
なので、漆を楽しみたいなら十角や背鰭などがオススメです。

いつも丸軸万年筆を買おうと思うのですが、結局十角などに吸い寄せられてしまいます。
実はTWはSTより1mm太い
TWを購入するまで気付かなかったのですが、TWとSTは同じように見えて、軸径などが僅かに異なります。
たしかに2本並べてみると、写真左のTWのほうが、ぱっと見で太く見えますね。
首軸のデザインもSTのほうがスリムです。

TWのほうが全体的にわずかに太く重いので、ゆったりとした持ち味になっています。
気軽にガシガシ使いたい人は細軸のSTのほうが向いており、腰を据えてゆっくり使いたい人にはTWが向いている印象です。

てっきりTWとSTは同じ軸のデザイン違いだと思っていましたが、意外な違いでした。
細字と細軟は全く別物
これはペン先についてなので十角とはあまり関係ありませんが、悩んでいる方のために紹介しておきます。
STの青溜は細字で、TWの鴇溜は細軟で使っていますが、この2つのペン先は全く別物と言っても過言ではないくらい違います。
2本を並べてみるとわかりますが、左の細軟と右の細字はペン先の厚さが全く異なっており、約2倍ほどの差があるのが確認できます。
これにより、細軟はちょっとの筆圧でグイッと開く柔らかさを実現しています。


続いてサラッと書き味について触れていきます。
細字(Fine)
かなりガッチリとした書き味で、筆圧がかかってもほぼ開くことなく一定的に書けます。
とにかくたくさんの文字を書いていくのに最適で、実用的な一本として使うのに向いています。
実際に文字を書いて見ると終始、均一な字幅で筆記できています。


筆圧がかかってしまっても受け止めてくれるので、どんな時でも安心して使えるんです。
細軟(Soft Fine)
筆圧がかかるとグイッとしなるので、文字を書いている際に味が出やすいです。
ハネやハライの表現が容易で、文字を書く行為そのものを楽しむのに向いています。
こちらも同様に文字を書いて見ると、少しだけ字幅が変化しており、「え」の最後のハライに勢いがあるのが確認できますね。


細字がベースなので字幅は大きく変化しませんが、動きのある字になりやすいです。
軟調ペン先は紙と触れる角度などが変化しやすいので、書いていて引っ掛かりを感じる事もあります。
ですが、そこは中屋の調整の妙があるのか、使っていて全くストレスがありません。
他ブランドの万年筆の軟調ペン先に苦手意識がある方でも、中屋万年筆の軟調ペン先なら気持ちよく使えますよ。


ボクは筆圧が少し強いので軟調を敬遠していましたが、中屋の細軟なら楽しめそうです。
まとめ:十角軸と漆のコラボレーションが美しい

中屋万年筆 十角は、十角軸と漆のコラボレーションが美しい一本。
その角ばった軸の魅せる漆の表情は、他の漆塗り万年筆でも、角軸万年筆でも見られません。
中屋らしいオンリーワンの万年筆なので、気になっている方はぜひチェックしてみて下さい。
以上、カクタケイ(@kakutakei)でした。